自然の中でのお仕事

第2部:自然体験活動を生業とする

里山に目覚める

3年間の期間限定で採用された、地域振興団体は、里山地区の地域振興団体でした。私は主にイベント担当となり、大型イベントの企画運営、小学生対象の「里山自然学校」での自然体験活動の指導、里山ガイドハイクの企画運営、里山ガイドの育成などなどを行っておりました。ガイドハイクや、ガイドの育成を通じて、自分自身が里山の知識や生態系を身につける機会となりました。

森の幼稚園」に出会ったのもこの頃です。子どもたちを森でガイディングするという程度にしか考えていませんでした。そして、自分が森の幼稚園に関連した仕事をするとも考えていませんでした。

CONEトレーナー

ところで、この頃に、CONEトレーナーという団体資格を取得しました。先述した自然体験活動推進協議会では、自然体験活動の指導者育成システムを確立しており、CONEトレーナーが、コーディネーター、インストラクター、リーダーという役割の指導者を育成していました。現在では、自然体験活動推進協議会も傘下に入っている形になっていますが、NEAL(ニール:Nature Experience Activity Leader)という指導者育成システムに移り変わっており、CONEトレーナーの役割は、主任講師が行うことになっています。この、CONEトレーナーを取得するのには、10年程度の経験(もちろん、内容の濃さも)、指導者育成経験なども問われ、試験や面接をクリアーしていかないといけませんでした。私にとっては、目標の一つでしたので、「ようやくここまでたどり着いたか。」と感慨深く思えた瞬間でもありました。しかし、CONEトレーナーを取得したからと言って、自動的に仕事が降ってくるわけではありません。CONEトレーナーを取得してよかったのは、自然体験活動の指導者を体系的に育成できるノウハウを理解できたことです。

CONEトレーナー養成会 長野県の安藤百福記念自然体験活動指導者養成センターにて

今は、保育園や幼稚園毎にNEALの指導者育成をする機会に恵まれています。

高学年がこない

私が学生の頃から目指していた「仕事」は組織キャンプの運営でした。学生などのボランティアリーダーなどの活躍の場をつくりつつ、小中学生の野外教育の指導を、ディレクターとしてするというものです。地域振興団体の時には、「里山自然学校」という、組織キャンプの運営に似た団体を作り上げていましたが、仕事にできるというほどの単価にもならず、スタッフ達も仕事を持っている方々がほとんどであったため、回数をこなすこともできませんでした。さらに、以前はメインターゲットであった小学校4〜6年生の子どもたちがほとんど参加しなくなったのです。高学年が来ない理由は、「習い事」や「学校のクラブ活動」で忙しいでした。

新しい風が吹き始めた

この頃に出会ったのが、仲間達が実施しはじめていた、幼児向けの自然体験活動でした。小学生が参加しなくなったので、幼児向けに展開してみよう。他県では「森の幼稚園」が動き始めている。そんな理由で、あくまでも「自然体験活動」が軸足の活動でした。

私にしてみれば小中学生がターゲットで、幼児向けの「野外教育」や「自然体験活動」などは、想定外ではあったのですが活動現場をのぞきに行ってきました。当時は、教育面はあまり重視されておらず、ネイチャーゲームなどをベースとした体験活動を提供していたと記憶しています。それでも、子どもたちは笑顔であふれており、「ウキウキ」して楽しそうにしていました。

当時の活動の様子

火を起こして、テント泊をして、山を歩き、海を潜り、釣った魚をさばいて食べる、少なくとも1泊2日のキャンプ泊を想定していた私には、たった2時間ほどで、チビたちと里山や公園でのお散歩をするということが「仕事」になるとは思っていませんでした。

そんな折り、県の事業を手伝ってほしいという依頼がありました。保育園担当課が「県下の私立の保育園に40万円の補助をする」、その予算の中で園児向けの自然体験活動を定期的に実施してもらいたいということでした。この予算は1年限りのものでしたが、県下の保育園や幼稚園に「幼児向けの自然体験活動」という新しいジャンルを広める機会になりました。

私が所属していた地域振興団体も、里山を活用するという大命題があったこともあり、これまでに、里山でガイディングや小学生向けの体験活動を実施していた経験もあり、近隣の保育園からの問い合わせ窓口を務めることとなりました。この頃に参加していただいた保育園の中には、今もお付き合いさせていただいている園もあります。

さて、この県の補助金事業ですが、幼児向けの自然体験活動に関するノウハウのない「私」と「私が所属していた団体」は、幼児らをどのように里山へ案内したのか。今となっては考えられないことですが、我々は大人向けの里山ガイドハイクと同じノウハウを用いて、園児たちをガイドしたのです。つまり、里山の植物の名前や特徴を園児らに一方的に説明していたのです。

余談

余談ではありますが、アメリカ国立訓練研究所の研究結果によりますと、ラーニング・ピラミッドというのがあり、つまり、学びの段階なのですが、一方的な講義を聞くよりも、他の人に教えるほうが、学びが深いとのことです。ただし、数字の根拠がないという説もありますが、人に教える方が知識の定着がいいことは間違いがないことだと思います。

CONEフォーラム

今では、子どもたちにも先生たちにも、お花の名前や植物の名前を一方的に伝えることは、ほとんど実施していません。なぜなら、自身の生活に関連しないこと、楽しいことでないと、記憶に残らないからです。もちろん、私の活動は、脳という記録媒体に記憶を残してもらうことが目的ではなく、身体全体で感じる価値を揺さぶり身体全体での記憶に残してもらうことだと思っているからです。

元アイダホ大学教授のサム・H・ハムは、(ネイチャーガイドや博物館のキュレーターなどが、解説時に利用する技術である)インタープリテーションのTORE原則を提唱し、インタープリテーションを行うにあたり、「Theme:テーマがある、Organized:構成されている、Relative:参加者と関連性がある、Enjoyable:楽しい」という要素が必要としています。

https://panorama.solutions/sites/default/files/Ham-TORE_model-2008.pdf

なお、インタープリテーションの6つの原則をまとめた、フリーマン・ティルデンは、「子どもに対して実施するインタープリテーションは、大人向けのものとは異なった設計、別のプログラムが必要」と言っています。

つまり、幼児らを連れて森に行った時に何をするべきなのか?「幼児らに関連があること」≒「興味があること」、「大人とは違ったアプローチ」≒「知識の伝達よりは、体験から感じる・気づく」ことを意識しないといけないと思っています。

随分と横道にそれてしまいました

なぜ、私がこんな仕事をしているのかがテーマでした。

この地域振興団体に職員として所属している間に、幼児の自然体験活動への下地ができ、道は開かれていました。それ以外にも、地元の総合病院との連携で、里山ヘルスウォークなども何回か実施しましたが、継続的に実施できる見込みはありませんでした。

3年という契約期間は早いもので、3年目の秋頃から、次の就職を考えないといけなくなり、いろいろとジタバタしました。森林組合などにもアプローチをしましたが、1ヶ月9万円なら雇用できるとかという回答で、家族を養えるほどの仕事はありませんでした。そうです、40代のフリーターを適当な給料で雇ってくれるところなどどこにもなかったのです。森の幼稚園は手探り状態で、県内で実施している方もなく、求人もありませんでした。

八方塞がりを感じながら、半ば仕方がなく、そして、ようやく自然を舞台にした仕事ができる!!という喜びと不安を感じながら、環境教育事務所ネイチャーブランドプランニングを立ち上げることにしました。(ちなみに、ガソリンスタンドでアルバイトも兼務でやり、3年くらいたつと、「店長」と呼ばれるようにもなってしまいました。)

平日に働こう!

自然体験活動を実施している多くの団体がどうやって成り立っているかご存知でしょうか。夏休みなどの長期休暇に年収の8〜9割を稼いでいます。最近では、修学旅行などの団体を受け入れて平日も動いている団体もありますが、週7日のうち週末だけ動いている団体も多いと思いませんか。私は、環境教育事務所ネイチャーブランドプランニングを立ち上げる時に、平日をメインに事業を展開する仕事にしようと思いました。ポジショニングを平日にしたということです。

きちんと支払おう!

自然体験活動を実施している団体の構成員のほとんどが、ボランティアや研修生というところもあります。一昔前とは異なり、最低時給程度は支払っているところも少なくはないようです。私が地域振興団体にいたときにも、お手伝いをしていただける方には謝金を払っていましたが、実質的には最低時給を切っていたこともあったと思います。自然を舞台にした仕事は、「社会的意義」がありそして継続的でないといけないと思っています。そして、継続的にしていくには、継続的に働いていただける方を確保しておかないといけないということだと思っています。私の仕事を手伝っていただいている方には、少なくとも時給2,000円以上をお支払いし、半日なら8000円〜程度をお支払いするようにしています。

石川県でも、またその他の多くの地域でも、自然を舞台にしたお仕事は、未だに「陽の目を見ない」状況ですよね。このブログを読んでいただいている方もそのように感じられているのではと思います。地域振興団体にいる時は、安定的に給料は支給されていたので、ガイドなどの参加費はボランティア価格に設定していました。たとえば半日の里山ガイドの大人の参加費は傷害保険料込で1,000円だったと思います。50人の参加者が集まっても5万円の収入しかありません。しかし、50人規模を運営しようとすると、少なくとも4人のガイドが必要ですし、裏方の仕事として「企画」「下見」「広報」「受付」「準備」「会計」など煩雑な仕事をこなさないといけません。また、実際には、観光地ではないところで、里山ガイドを実施しても、参加者は多くて20人程度で、3〜4人のガイドが運営に携わっている状態でした。つまり、1回2時間程度のガイドにお支払いできるのが、2〜3,000円というのが実情です。毎日仕事があるわけではなく、事業規模にはなれないボランティアです。

第3部 私のメインフィールドに続く

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