保育士・幼稚園教諭の成長を望むなら、教えない研修をしよう

教える・教えられる

カツオが初めて授業をしたのは、大学を卒業して就職した進学塾での新人研修での模擬授業でした。新入社員が中学受験レベルの算数を教えられるようにと、1ヶ月半ほど、研修担当官と同期入社した同僚の前で毎日のように模擬授業をしていました。
塾の先生になるつもりもなく、当時は「野外教育」をするつもりで入社した会社で、受験指導に関わるとは思ってもいませんでした。同期の多くは、学生時代に塾講師の経験を積んでおり、受験指導も経験済みで、授業をするということでは格差を感じていました。一部の同期は、受験指導を続けており、「県の責任者」などにもなっているようで、すばらしい授業をしているのだろうと思っています。
この1ヶ月半の経験は、人の前で話をすることへの抵抗がなくなり、声の使い分けなどを身に着けたと思います。しかし、この当時は、伝えること=教えるでした。限られた時間で、いかに上手に教えられるか、つまりポイントを伝えられるかが大事でした。

カツオが保育士研修を初めて実施したのは、ある保育園で、全職員にNEALリーダーを取得したいという相談があったときからでした。
この「ある保育園」は、山間の小さい保育園で、将来的な存続が危ぶんでおり、自然豊かな環境を生かした保育をしたいうことで、カツオが地域の山や川を生かした自然体験活動の指導をしていました。
通常、園児らには、「花の名前」を教えたりすることはないので、NEALリーダー研修を通して、そういった背景を伝えたいと思い、研修を設計したことが、現在、保育士・幼稚園教諭らへの研修をしている「ネタ」のベースになっています。

当初、保育士研修を実施した際に感じたことは、「多くの保育士さんたち」は、一方通行の知識伝達型の「教えられる研修」にしか慣れていないことです。カツオがもう一つわかったことは、「多くの保育士さんたち」と「園児たち」とのコミュニケーションが、一方通行知識伝達型がほとんどということがわかりました。この保育士さんらの反応から、通常の保育:教育の仕方が、カツオには見えたことは、研修のあたらしい切り口にもつながりました。

居眠り防止から生まれた「手・口・頭グルグル作戦」

以降の研修は、「保育士研修会」のみならず「社会人研修」などにも「手・口・頭グルグル作成」を活用しています。例えば、カツオが研修に投げかけた質問(多くはYES,NOで答えられるものではなく、過去の経験に基づいて考えないと答えらません)に対応し、考えきることで、とても疲れられ、脳の栄養素である「甘いもの」を欲する方が8割以上いました。(なので、カツオがメインで研修をするときには、おやつをたくさん準備して、研修中の飲食を自由にしています)
当初、キーワードを与えて「考えてもらったり」、「グループでお話をして結論をさがす」作業を取り入れたのは、研修に「ライブ感」を取り入れたかったこと、つまり、講師と受講生の間、あるいは、受講生どおしで(研修に関するテーマで)おしゃべりが生まれることで、講師の話をだまって聞き、板書をメモするだけの「授業」とはちがった、全体で研修をつくる、イキイキした空間をつくりたかったこと。

そして、なによりも避けたかったことは、受講生の居眠りです。大学生の頃、大学の先生からは、「授業を妨害するような雑談をするくらいなら、寝ているほうがまし」と講義の最初によく言われたのですが、今なら「居眠りをするような退屈な授業をするなんて。。」です。研修会は園の実情にあわせて設計する=ゴールを決めることが多いので、研修会全体にかかる時間の割合は準備が9割くらいです。研修時間だけで見ると1時間あたりの単価は割高に見えるでしょうが、研修時間の8〜9倍以上の時間をかけて準備をしています。その研修を、居眠りされるのはとても残念なので、手、口、頭を動かしていただく時間を設けると「眠気に襲われる」よりもエネルギーを使うので、居眠りがさけられるだろうと考えたことです。

「手・口・頭グルグル作戦」が以外な効果をうみ、保育園の理事長などから、「研修を受けた職員から「主体性の芽生え」を感じられるようになり大変嬉しく思っています。」と、高評価をいただけるようになりました。

最近知った「教えない研修」の理論的効果

ライブ感の創出とと居眠り防止のために始めた、「手・口・頭グルグル作戦」。実は、最近(と、いっても2年ほど前ですが)、ある「理論?・モデル?・経営マネジメント?」との手法とよく似ていることがわかってきました。

それは、SECI(セキ)モデルという理論で、独立行政法人中小企業基盤整備機構中小企業大学校総長野中郁次郎さんらが執筆された「知識創造企業(1996)東洋経済新報社」において提唱されたマネジメント理論です。簡単に説明すると、個人個人が蓄えている知識を、関連する人々と共有していくことで、組織で新たな知識を創造したり、組織力を高められるということです。
SECIモデルの説明は、グロービズ経営大学院のページが簡潔でわかりやすいので覗いてみてください。

研修のいち場面を見ていただきましょうか

1.お話をする題材を提示して、2.個人で意見を考え、3.グループで個人の意見を発表、4.グループで一つ以上の答えを「考え」る、5.グループの答えを出す。大事なポイントは、個人で考える、(答えは間違えていてもいいので)考えた答えを表現するということだと思っています。講師側から見えれば、馬耳東風にさせないように、「脳の中に防波堤をつくる」そして「防波堤の中のものを探ったり・触ったりする」というイメージです。

知識の伝達

保育士や幼稚園教諭を「研修会」に送り込む園長や経営者も、そして、送り込まれる保育士も、「研修会は技術や知識の伝承」と思い込んでいるのではないでしょうか。研修を担当する講師の多くもそうなのだと思います。
手っ取り早く、技術や知識を伝承するには、口頭で伝え、特に大事だと(講師が)思う点を板書で補ったり、資料を配布したりすることだと信じているのではないでしょうか。

ちがいます

大事なことは、「気づいてもらう」です。気づいてもらう方法はたくさんありすぎるのでここでは触れませんが、個人が過去に築いた知識や経験を掘り起こす作業が必要です。嫌なことに取り組む気持ちや、失敗したらどうしようという気持ちに打ち勝つ段階が必要なのです。できれば、簡単な失敗をした方が良いくらいだと思っています。
なぜ「この講師は、教えないのだろう」、なぜ「この講師は意地悪なのだろう」と、「教えない研修」の裏の目的をさぐれるようになり、研修の最後の段階で、「ハッ」と気づいてもらえるような研修になればいいなと思っています。

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